世の中には、一般の人よりも短い睡眠時間で活動できる「ショートスリーパー」が存在します。睡眠時間を短くできたら、その分活動時間が増えるので少し憧れますよね。「天才は睡眠時間が短い」なんて話を聞いたことがある人もいるでしょう。一方で、睡眠時間を削ることによる健康や寿命への影響も気になるところです。
そこで本記事では、ショートスリーパーの特徴や診断方法、ショートスリーパーになれるのかなどの気になる疑問について解説していきます。良質な睡眠をとるポイントも紹介していますので、睡眠効率で悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
1.睡眠タイプは3種類ある!
睡眠タイプにはショートスリーパー、ロングスリーパー、バリアブルスリーパーの3種類があります。ここでは3つの睡眠タイプについて、それぞれの睡眠時間や該当する人の割合を紹介していきます。
1-1.ショートスリーパー
ショートスリーパーとは、短時間の睡眠でも十分に健康を維持できる体質の人です。具体的には、6時間未満の睡眠でも支障なく日常生活を送れる人を指します。
厚生労働省の「令和元年 国民健康・栄養調査結果」によると、睡眠時間が6時間未満の人は日本人全体の約4割。
しかし、この中には睡眠障害で眠れない、睡眠時間の確保ができないなどの理由で短時間睡眠になっている人も含まれるため、本当の意味でのショートスリーパーの割合を示しているわけではありません。
一般的にショートスリーパーの割合は人口の1%未満だと言われていますが、正確な数値は明らかになっていません。
1-2. ロングスリーパー
ショートスリーパーとは対照的に、長時間の睡眠を必要とする体質の人をロングスリーパーと呼びます。具体的には1日に10時間以上眠る人を指し、3~9%の人が該当すると言われています。
なおもともとの睡眠時間が長い子どもの場合は、同世代の平均睡眠時間より2時間以上長いことが基準となります。
1-3.バリアブルスリーパー
バブリアブルスリーパーは、ショートスリーパーとロングスリーパーの中間に位置する人。バリアフルスリーパーは6~9時間の睡眠をとれば問題なく活動できるとされており、睡眠時間を短くしたり延ばしたりしやすいことから、「variable:変化しやすい」という意味の名前が付けられました。
ちなみに、日本人の平均睡眠時間は6~7時間で、日本人の80~90%がバブリアブルスリーパーだと言われています。
2.ショートスリーパーの特徴は?
ショートスリーパーは、普通の人と比べて短い睡眠時間でも支障なく生活できるのが特徴。習慣的に6時間未満の睡眠を続けても昼間に眠気を感じず、また楽観的で精力的に活動できたり、複数のことを同時に行えたりする人が多いと言われています。
短い睡眠時間でも疲れが溜まらない理由は、睡眠サイクルにあります。睡眠には脳の眠りが浅い「レム睡眠」と、脳の眠りが深い「ノンレム睡眠」があり、レム睡眠は記憶の定着に、ノンレム睡眠は疲労回復に重要な時間だと考えられています。
ショートスリーパーはそうでない人と比べレム睡眠が少ない一方で、ノンレム睡眠の時間はほとんど変わりません。短い睡眠時間で効率的に脳やからだを休めることができため、睡眠時間が6時間未満の日が続いても、健康上問題なく過ごせるのです。
なおショートスリーパーになる詳しい原因は現在分かっていませんが、さまざまな研究によると、遺伝子が関連していると考えられています。
3. 短時間睡眠や不眠症との違いは?
睡眠時間が短いことを表す言葉には「短時間睡眠」や「不眠症」などもありますが、これらはショートスリーパーとは異なります。ショートスリーパーを正しく理解するために、その違いを確認しておきましょう。
3-1. 短時間睡眠
短時間睡眠とは、その名の通り睡眠時間が短いことを指します。ショートスリーパーとの大きな違いは、本人にとって必要な睡眠時間を取れているかどうか。
たとえば毎日5時間しか睡眠を取らない人で、日中に眠気を感じたり集中力が低下したりと睡眠不足の自覚がある場合はショートスリーパーではありません。また休日に長時間寝てしまうなど、足りない睡眠を補おうとする人は、短時間睡眠だと考えられます。
3-2. 不眠症
不眠症とは、寝つきが悪い、寝ている間に何度も目を覚ます、早朝に目が覚めてしまうなどの症状があり、十分な睡眠を取れない状態が1ヵ月以上続くこと。原因は心身の病気や薬の副作用、ストレスなどさまざまなケースがあります。
ショートスリーパーは短時間睡眠でも翌朝すっきり目覚められますが、不眠症は本人にとって必要な睡眠時間を取れていないため、日中は眠気や疲労感などの自覚症状を伴うことが多いです。自身での不眠対策で効果が出ない場合は、専門医の指導のもと適切な治療を行いましょう。
4.ショートスリーパーの診断方法は?
ショートスリーパーかどうか確かめる方法があるのか気になりますよね。一般的に、診断の際は普段の睡眠時間を記録します。そして、6時間未満の睡眠でも健康上に問題がないか、日中の集中力は続くか、昼間は眠気に襲われないかといったことを確認し、問題がなければショートスリーパーと診断されます。
ショートスリーパーは病気ではないため、睡眠時間が短くても生活に支障がなければ診断を受ける必要はありませんが、ショートスリーパーなのか睡眠不足なのか判断が付かず不安を抱えている場合は、睡眠障害を専門とする病院などで診断してもらうことも検討しましょう。
昨今では、インターネット上で自己診断できるサイトもありますが、適切な睡眠時間が分からず悩んでいるなら専門医に相談しましょう。
5. ショートスリーパーは寿命が短い?睡眠時間と寿命の関係
「短睡眠は短命を招く」とよく聞きますよね。では、睡眠時間が短いショートスリーパーは寿命が短くなるのでしょうか。
昨今の研究では、睡眠時間が短いほど病気や老化のリスクが高くなることが示されています。ただし、それはショートスリーパーではない人が短時間睡眠を続けた場合。ショートスリーパーは「短時間睡眠でも健康上の問題がない人」であり、その人にとっては必要な睡眠時間を確保できているため、健康や寿命への悪影響はないと考えられています。
一方で、ショートスリーパーでない人が短時間睡眠を続ける(睡眠不足の状態が続く)と健康上のリスクが高くなります。一般的に最適な睡眠時間は6~7時間と言われており、短すぎても長すぎても良くありません。自分の睡眠タイプに沿った睡眠時間を確保すること、そして質の良い睡眠をとることが大切です。
6. 天才にはショートスリーパーが多いって本当?
必要な睡眠時間が短いと日中活動できる時間が長くなるので、成功者は睡眠時間を削ってハードワークしているのでは?と思いますよね。「天才にはショートスリーパーが多い」とよく言われていますが、実際には一概に言えません。
たとえば、ナポレオンやマーガレット・サッチャー、ビルゲイツなどは一日数時間程度のショートスリーパーと言われている一方で、発明家のエジソンは4~6時間ほど寝るバリアブルスリーパー、理論物理学者のアインシュタインは1日10時間以上眠るロングスリーパーで知られています。
したがってショートスリーパー=天才とは言い切れず、成功するには必ずしもショートスリーパーになる必要はありません。むしろ偉人たちに習い、日中集中するために自分にベストな睡眠時間を取ることが大切だと言えるでしょう。
7. ショートスリーパーになる方法はある?
ショートスリーパーになって日中の活動時間を増やしたいと思っている人もいるのではないでしょうか。しかし、前述の通りショートスリーパーは遺伝的な要因が関係しているため、訓練や努力でショートスリーパーになる方法はありません。
ショートスリーパーでない人が無理をして睡眠時間を削ると活動時間は増えますが、日中に眠気を感じたり集中力が低下したり、かえって生産性が下がる可能性が高いです。日中に能率的に活動したいなら、睡眠時間を削るよりも睡眠の質を上げる方法を探しましょう。
8. 日中の作業効率を上げるには「睡眠の質」が大切!
日中の作業効率を上げるには、睡眠時間だけでなく質の良い睡眠を取ることも大切です。では、睡眠の質を向上するにはどうすれば良いのでしょうか?
8-1.質の良い睡眠とは
そもそも質の良い睡眠とは何なのでしょうか?厚生労働省の評価指針では、質の良い睡眠について下記のように定義しています。
など
すなわち、スムーズな入眠、すっきりとした目覚め、そして熟睡ができているなら、良い睡眠をとれている状態と言えます。適切な睡眠時間は睡眠タイプや年齢、生活スタイルによって異なるので、「〇時間以上眠る」よりも「どれだけ良い睡眠を取れるか」を意識してみましょう。
なお、睡眠の質を高めると、心身の疲労回復や健康維持、美容、ストレス解消などさまざまな効果が期待できます。日中を活動的に過ごせるようになることで、それがまた良質な睡眠をもたらし、健康的な生活サイクルにつながるでしょう。
8-2.睡眠にはサイクルがある
睡眠の質を高めるにあたって、睡眠サイクルについて理解しておきましょう。私たちは、眠っている間に「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」という2種類の睡眠状態を繰り返しています。
レム睡眠は脳が活発に働いている浅い眠り、ノンレム睡眠は大脳が休息している深い眠りです。入眠するとまずノンレム睡眠から始まり、約90分の周期でレム睡眠とノンレム睡眠を一晩に3~5回繰り返します。そして朝が近づくにつれレム睡眠が長くなっていき、からだは目覚めの準備が整います。
(引用元:東洋大学「快適な眠りのために」)
朝すっきり目覚めるためには、レム睡眠のときに起きるのがポイント。また、眠りの深いノンレム睡眠をしっかりとることも熟睡感につながります。
8-3. 睡眠の質を上げる方法
では具体的にどうすれば睡眠の質を上げられるのでしょうか? まず大切なのは、レム睡眠のときに起きられるように就寝時間を調節すること。
たとえば、90分のサイクルに合わせて、就寝から6時間後(90分のサイクル×4回)や7時間半後(90分のサイクル×5回)に起きられるようにアラームを設定すれば、レム睡眠のタイミングにすっきり目を覚ましやすくなります。「睡眠日誌」をつけて、自分にとってベストな睡眠時間を探してみるのもおすすめですよ。
またスムーズに入眠し深く眠るためには、生活習慣や睡眠環境を整えることも大切です。日中や就寝前は以下の点を心がけましょう。
睡眠の質を高めるには、積極的に工夫することが必要です。規則正しい生活を送ることで睡眠が安定し、からだもこころも整っていきますよ。
9. 適切な睡眠を取ろう
今回は、ショートスリーパーの特徴や睡眠のポイントについて紹介しました。ショートスリーパーとは、体質的に短時間睡眠でも支障なく生活できる人のこと。遺伝的な要因が関係しているため、努力や訓練で目指せるものではありません。適切な睡眠時間は人によって異なるため、無理をせず自分に合った睡眠時間を確保しましょう。
日中の作業効率を上げるには、睡眠の質を高めることも大切です。本記事で紹介した内容を参考に、快眠するための工夫をしてみてくださいね。