睡眠は、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の2種類があり、これらの睡眠サイクルによって疲労回復や記憶力の定着といったさまざまな効果が見込めるとされています。「睡眠が重要なことはわかっていても、それぞれどういった役割があるかまでは知らない」という方もいるのではないでしょうか。
本記事では、レム睡眠とノンレム睡眠の違いや役割について解説します。年齢と睡眠時間との関係など、良い睡眠を取るために役立つ情報も紹介しますので、睡眠の質を上げたい方や、最適な生活習慣を作りたい方はぜひ参考にしてください。
睡眠中はノンレム睡眠とレム睡眠が交互に表れる
睡眠中には、ノンレム睡眠とレム睡眠が交互に表れることがわかっています。ノンレム睡眠とレム睡眠を合わせて睡眠周期(ウルトラディアンリズム)といい、約6〜8時間の一般的な睡眠時間には、この睡眠周期が約4〜5回繰り返されます。
一般的にレム睡眠は浅い睡眠といわれますが、ノンレム睡眠とレム睡眠それぞれで異なる役割があり、質の良い睡眠のためにはどちらも重要です。睡眠による効果を得るためには、両者のバランスが取れた睡眠サイクルを維持できるよう意識する必要があります。
レム睡眠とノンレム睡眠の違いってなに?
ここからは、レム睡眠とノンレム睡眠それぞれの役割や違いについて解説します。レム睡眠とノンレム睡眠は、睡眠の深さだけでなく、関係する体内活動や性能にも違いがあります。
レム睡眠とノンレム睡眠の違いや役割について理解することで、バランス良くレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返す睡眠が理想的とされる理由がわかるでしょう。
レム睡眠とは
まずは、レム睡眠の特徴について見ていきましょう。レム睡眠の「レム」とは「REM(Rapid Eye Movement)」のことで、別名「急速眼球運動睡眠」とも呼ばれます。名前の通り、レム睡眠は目玉がきょろきょろと動く急速眼球運動を伴います。
脳は活動した状態である一方で、筋肉は緩んでいて体は動かない状態にあることが浅い睡眠と呼ばれる所以です。
レム睡眠の特徴
レム睡眠は、急速な眼球運動を伴い、起きているときに近い脳の活動状態が見られます。一方で、体の骨格筋における筋活動は低下しており、体はほとんど動きません。呼吸は浅く心拍数や呼吸数も増加し、不規則になる点も特徴です。
レム睡眠時には、まるで覚醒しているかのようにまぶたの下で眼球が動くことがあります。これは大脳皮質が不規則に活動している状態と考えられており、脳波でも覚醒時に似た波形が見られることがわかっています。
一見眠っているように見えて脳が覚醒しているレム睡眠の時間帯は、夢を見やすい傾向があります。また、脳内で記憶や感情といった情報の整理整頓を行っています。
レム睡眠の役割
レム睡眠の役割には、記憶の定着や思考の整理などがあります。レム睡眠中に学習記憶に関わる脳の海馬が活発になることで、膨大な情報の統合や整理整頓が行われるのです。
1日に得た多くの情報や感情、できごとを記憶として整理し、インプットした学習内容を定着させるのがレム睡眠であり、睡眠の重要な働きを支えています。
レム睡眠は、運動や楽器演奏に関わる習得技術を体に記憶させるという役割も担っています。睡眠不足によってレム睡眠が短くなると、日中に習得した知識や運動技術を記憶として定着させることが難しくなります。
記憶力向上には、質の良い睡眠が必須といえるでしょう。
ノンレム睡眠とは
ノンレム睡眠の「ノンレム」は「Non-REM(Non Rapid Eye Movent)」のことで、レム睡眠とは対照的に「急速眼球運動を伴わない睡眠」と呼ばれます。
大まかにはレム睡眠の真逆の特徴を持っていますが、睡眠時間によるステージがあるなどノンレム睡眠特有の性質もあるので、詳しく見ていきましょう。
ノンレム睡眠の特徴
ノンレム睡眠は、入眠とともに始まる睡眠です。副交感神経が優位になることで、脳は休息状態になり、心拍数や体温は低下していきます。一方、全身の筋活動は活発化し、疲労回復のための寝返りなどが行われます。
徹夜のように一時的な睡眠不足がある場合、ノンレム睡眠が出やすく、深い眠りにつくことができるといわれます。徹夜の翌日に、いつもより深く眠った感覚がある、という経験はこうした仕組みが関係しています。
ノンレム睡眠は、脳波による脳の活動によって3〜4のステージに分けられ、段階ごとに眠りの深さが増す傾向があります。
睡眠時間の前半3時間ほどの間に、深いノンレム睡眠を取ることができれば脳も体も休まり、「ぐっすり眠れた」という満足感を得られるでしょう。
ノンレム睡眠の役割
ノンレム睡眠の役割は、脳の休息や成長ホルモン分泌による体内組織の修復や免疫機能の向上などです。ノンレム睡眠は特に体の成長に影響を及ぼすとされ、脳が休息モードの間に、体内機能の調節や体内組織の修復が行われます。
また、骨格形成や脂肪分解などの代謝機能や免疫の向上といった、生命維持に関わる重要な役割も担っています。子どもの成長や、大人の老化予防などは成長ホルモンによる代表的な作用として認識されており、成長ホルモンの分泌量は年齢とともに減少傾向にありますが、高齢でも分泌は行われています。
入眠直後の深いノンレム睡眠時には、成長ホルモンの分泌がみられることがわかっています。厚生労働省による「スマートライフプロジェクト」においても、入眠時のノンレム睡眠は「黄金の90分」とも呼ばれ、健康維持にとって重要であることが指摘されています。
年齢によってレム睡眠とノンレム睡眠の比率は変化する
レム睡眠とノンレム睡眠の睡眠周期(ウルトラディアンリズム)は、1周期約90分〜120分で、一般的な内訳はレム睡眠が約60〜80分、ノンレム睡眠が約10〜30分ほどとされています。ただ、両者の比率は年齢によっても変化することがわかっています。
新生児のレム睡眠は、睡眠時間の半分ほどを占めますが、小児期に入ると2割前後まで減り、成人の割合と同程度になります。高齢者になると、1.5割程度まで減少していきます。
厚生労働省の調査では、高齢者の睡眠中の脳波は、ノンレム睡眠が少なくレム睡眠が増えるという結果が出ています。
レム睡眠とノンレム睡眠はどうやって判断する?
レム睡眠とノンレム睡眠を厳密に判断するためには、脳波を測る必要がありますが、それぞれの外見的な特徴や寝起きの感覚などの特徴によって大まかな判断は可能です。
レム睡眠は脳活動が中心のため、体が動かない時間帯はレム睡眠と判断できるでしょう。また、脈や呼吸の乱れも1つの指標として使えます。一方、ノンレム睡眠では体が適度に動く傾向があります。寝返りなど体の動きが見られる時間帯はノンレム睡眠の可能性が高いでしょう。
また、夢を見やすい睡眠はレム睡眠といわれるため、夢が鮮明な記憶として残っている場合はレム睡眠の時間帯に目覚めたといえます。
なお、レム睡眠の後半周期は、朝の目覚めが良いタイミングとされています。逆に、起こしても目覚めないほど深く眠り込んでいる場合は、ノンレム睡眠の可能性があるでしょう。このように、目覚めた時の体の感覚は、睡眠を予測する判断材料として使えます。
良い睡眠を取るためには睡眠時間も重要
ノンレム睡眠とレム睡眠の効果を得るためには、十分な睡眠時間が必要で、目安は7時間といわれます。いくら睡眠の質が良くても、睡眠時間が短いと疲労が十分に回復しないまま目覚めることとなってしまうので、最低でも7時間前後は確保しておきたいところです。
理想の睡眠時間には明確な基準はなく、個人差もあるので一概には言えませんが、毎日7時間は睡眠を取ることを意識すると良いでしょう。
レム睡眠とノンレム睡眠はどちらも質の良い睡眠に欠かせない
レム睡眠とノンレム睡眠は、それぞれ特徴や役割に違いがあり、いずれも良質な睡眠には欠かせません。
脳内の情報整理の役割を中心とする「レム睡眠」と、成長ホルモンによる体の修復や成長の役割を持つ「ノンレム睡眠」の組み合わせによる効果を十分に得るためには、十分な睡眠時間を確保する必要があります。
体質や年齢など個人的な要素も大きく影響するため、絶対的な基準はありませんが、7時間以上の睡眠が目安とされます。最適な睡眠習慣を手に入れて、すっきりとした目覚めから始まる毎日を過ごしてくださいね。